コーチングの手法は、ほとんどがアクノリッジメント
(承認)である。相手を承認する事がコーチングなのだ。
私はコーチングの手法を勉強させて頂き、たくさん
気付く事があった。
1.相槌
承認の方法として、簡単だが忘れてしまいがちな手法が相槌。
「聞いていますよ。」「分かってまいすよ。」と伝える事。
相手が話をしている時に、真剣に聞いていればいる程、相槌を
打たなくなる。しかし、話している方も真剣。相槌がないと
「聞いてくれていない。」「何を考えているのだ。」と思い、
話が止まる。しかし、聞く方は真剣に聞いていただけなのに。
話を聞く時に心掛けてほしいのが、首を振り、話の内容に
リズム良く首をふる事。私も講演を受けて壇上で話している時、
聞いてくれているのか確認している。しかし、相槌を打って
聞いてくれている人はあまりいない。話をしている私の方を
見てくれている人もいない事も多い。話をしている側としては、
「聞いていくれているのか、分からない」「面白くない話なの
かな?」と頭によぎった時点で、講演の内容までが、暗く
伝わってしまいがちだ。それに比べ、最前列の人が、何人も
私の顔を見て相槌を打ってくれると、話も弾み、もっと伝え
たいと思う。それは、皆に共通な事だ。相槌を打って聞いて
いる態度を伝える事は、話を聞く上でとても重要な事なのだ。
そして、相手を承認する事に繋がるのだ。
2.リフレイン
コーチングの手法では、一番簡単で使いやすいもの。相手の
言った言葉をもう一度言う。A君が「今のままでは、いけない
のです。」と言う。私が「今のままではいけないのですね?」
と、相手の言葉をもう一度繰り返す。人は自分を認めてほしい
もの。ほとんどの人が、承認を求めている。認めて貰いたくて
意見を言うのだ。この場合も、A君が「今のままでは、いけない
のです。」と言っている自分が「今のままではいけないと
気付いた」という事を分かって欲しくて言っているのだ。
しかし、もし私がこの言葉をリフレインせずに、次の言葉を
発すると、A君はその言葉を承認してくれていないと考え、話が
おかしくなる。普通に考えると「何が今のままではいけないの
ですか?」と聞きたくなるが、そう言うとA君は、自分の意見を
分かってくれない。「何が、ではないだろう!」と激怒する
場合もあるのだ。一度「今までのままではいけないのですね」
と、リフレインをすれば、A君は、自分の言った事が伝わった、
承認されたと考え、話が次に行くのだ。
もっと言えば、A君が「今のままでは、いけないのです」と
言った後に、次の展開まで頭がいき「違うだろう」などと
言ってしまったら、身も蓋もない。目も当てられない状況に
なる。私も、よくこのような事をしてしまい、話し合いが
話し合いでなくなる事がある。失敗したと反省する。本当の
目的が話し合いにあると考え、どんどん意見を出し合いたい
ところなのだが、相手の言葉を一度リフレインし、「言って
いる言葉は理解している。」と返さないければ、話し合いは
繋がらない。
私が逆の場合でも、話がスムーズに行く相手は、リフレインを
無意識でやってくれているからかも知れない。
また、上司として部下の意見を聞く場合にもリフレインは有効
なのだ。例えばB君が「今月は売上が上がらないのですが」と
言う。上司である私が「なんとかして上げろ」とか「ダメじゃ
ないか」と切り出すと、話は終わってしまう。B君は、私が
言いたい上記の言葉を言われるだろうと分かっていて「今月は
売上が上がらないのですが」と言ってきてるのだが、「なんとか
して上げろ」とか「ダメじゃないか」と言われると、私に対して
自分の事しか考えていない。B君の事は、何も分かっていないと
思いこんでしまう。そこを、「今月は売上が上がらないんだ」と
リフレインする事で、B君は売上に苦しむ自分を分かってくれたと
判断する。それからの話は、B君を一度承認しているのでスムーズ
になる。
もうひとつリフレインの例がある。C君が私に「社長の考えは間違って
います」と大変失礼なことを言ってきたとする。この場合、C君に
「失礼だろう!」と、つい大きな声で言ってしまうと、これも同じで
C君の意見は却下されたと感じ、話し合いにはならない。
しかし、「社長の考えは間違っているのだ」とリフレインすると、
間違っていると言うことを承認する訳ではないが、C君の問題定義を
社長は耳にした、内容や意見を聞いてみようという事になる。失礼な
言葉を発した部下や社員でも、発した言葉をリフレインする事により、
本意を聞く事ができる。また、どんな場合でも話し合いがスムーズに
行く。そして、上司である方々に対し、部下からは、懐が大きく
見えるので一石二鳥の手法なのだ。リフレインは、相手との話を
スムーズにする、一番簡単な手法。使わない手は無い!