DO IT! 農業は挑戦する!
生産者が消費者を囲い込む! (2001年収録)

納めるだけで自分たちが作っている商品がどのように
売られているかも知らない生産者・農産物が、本来
どのように生産され加工されるかというプロセスを
知らない消費者。
日本の農業が抱える大きな課題に直面した2人の
経済連職員が「伊賀豚」の普及を目指して豚肉加工
施設「手づくりハム工房モクモク」を創業して12年、
生産者が直接消費者と交流する新しい「農」の在り方を
追求し、いまや年間30万人以上も集客する工房公園
「伊賀の里モクモク手づくりファーム」を作り上げた。
「共感」をキーワードに消費者と生産者が交流する
この施設にはハム・ソーセージなどの豚肉製品、パンや
パスタ、地ビールなど、地元の食材を手づくりで加工する
工房が立ち並び、作るプロセスの見学・体験、食事が
楽しめる。その客単価は実に4~6千円、入園料の
10倍を超える。 通販による固定客も全国に広がり、
モクモクの「農」ビジネスは今、各方面の注目を集める!

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■会社情報
本 社 三重県阿山郡阿山町西湯舟3609
代 表 社長理事 木村修氏
設 立 1983年
売上高 23億円(1999年3月期)→28億円
社員数 210人(1991年)→220人
組織構成 設立当初養豚農家19名の農事組合法人
事業の種類 直営農場、直営農畜産加工場、
ファクトリーファームの運営、通信販売、直営
店舗の運営、農場レストランの運営、量販向け卸し販売

■会社沿革
輸入牛肉の自由化により、豚肉離れの危機意識が畜産家の
中に生まれ、1983年、三重県の畜産連合会は付加価値を
高めるために「伊賀豚」という銘柄豚を生み出した。食の
安全性を重視するイオングループが、畜産家をまとめれば
全量を買い取ってくれることになった。そこで、連合会で
営業を行っていたメンバー数名が農業生産法人を作り、
伊賀山麓豚肉という統一ブランドで販売することになった。
ところがイオングループは半分しか買い入れてくれなかった。
そこで、生協へ販路を拡大したり、地元のスーパーの店頭で
畜産家が店頭に立ち、販売促進を行った。生産者が店頭に
立つことで消費者の視点で、自社製品と他社製品の価格や
売れ行きを比較して見ることになった。しかし、スーパーへの
納入は200店舗にまで増え、売上が増えたが、消費者の顔が
見えないことに危機感を持ち、産直を増やすために地元の
スーパーを除いて、スーパーや商店との取引は止めた。

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1987年には、単に銘柄豚肉を販売するのではなく、さらに
付加価値が高くなるように、伊賀豚を使ったハム作りを行う
農事組合法人「伊賀銘柄豚振興組合」が設立された。
そして、ハム工房が完成して、ハムの製品開発で有名な
職人を招き、翌年から伊賀豚を使った高級ハムを生産し、
販売を開始したが目論見に反して売れなかった。加工所の
隣のログハウスで直接販売(補助事業)したが、日商は
最高で3000円であった。高級品ゆえに、地元の人が日常に
使用するハムとして買いに来てくれなかったのである。
取引先へ日々の支払いはできたものの、売上が十分でなく、
工場などの償却ができないので当初は赤字だった。
そこで、組合員達は考え、高級ハムが売れそうな、贈答用へ
ターゲットを変更した。夏からギフト用販売を試験的に始め、
手応えをつかんだので、60万円かけてカタログを作成し、
冬から本格的にギフト商戦を開始した。組合員全員で
販売した結果、手作りハムの売上は伸び、それまでの
月次赤字を一掃できた。結果として、年間売上高は
1億2~3000万円、収支はとんとんになった。ギフト用の
ハムを購入してくれた顧客からのヒヤリングで、ハムは
メーカー名で売れているのに気がつき、マスコミを通じて
ブランド名を売ろうということになった。加えて、最終
消費者を囲い込むため、自分たちの事業へ巻き込む
ことが必要になった。