売り上げはどうかというと、毎週預かった
物件のオープンルームをする。広告料は
私の負担。1回のオープンルームでチラシを
1万枚ぐらい新聞に折り込み、新聞の紙面に
広告を入れて、総額15万円ぐらいかける。
信用が無く、実績のない私。売主から直接
仕事を請ける事はないので、買って頂いた
方から貰う仲介手数料のみが収入。突然
会社を辞めて起業した私は、直接売主からは
仕入れができていなかった。粗利として入る
お金は、仲介料として買主から入る50~60万円
なのだ。
1回オープンルームすると広告代が15万円。
2回すると30万円。3回すると45万円なので、
売れたとしても仲介手数料50万円から広告
料の45万円を引くと5万円しか残らない。
広告代理店を儲けさせる為にオープンルームを
したようなものだ。だから、1回で売らないと
生活ができない。面白みが無いと言いたい
ところだが、それどころではなかった。
とりあえず、事務所はワンルームで始めたが、
さまざまな経費が掛かる。事務所の家賃。
電気代に電話代。コピー機のメンテナンス費用。
輪転機のリース代。「売れなかったらすぐ倒産。」
という状況だった。オープンルームにお客様が
来られたら「この人に買わせなければ…。」と
思っていた。ハイエナみたいに感じるが、背に腹は
変えられないのだ。1回で売らなかったら50万円は
入ってこない。売れても売れなくても、15万円の
広告料は飛んでいく。
実収入は差し引き35万円。しかし、仕事の割には
少ない金額。でも「35万円が入らなかったら
死んでしまう。」そんな気持ちで、毎週オープン
ルームをしていた。ハイエナみたいな営業だが
「サラリーマン時代の人を騙す仕事と違うか
どうか…。」なんて考える暇もなかった。
オープンルームの誘導看板はお手製。一般的な
不動産会社はプラスチック製。案内の矢印は
ビニールのシールが普通。しかし、私はお金が
無かったので、近くのスーパーで段ボール箱を
もらってきて、適当な大きさに切り、それに
コピー機で印字した紙を糊付けして作成する
手作りのもの。お手製というと格好がいいが、
雨が降ると糊がはがれ、誘導看板の意味が
無くなるようなものだった。
オープンルームの日は朝6時に起き、その看板を
50程設置してまわる。また、チラシは1000枚程
手配りする。そして、オープンルームの部屋で待機。
部屋に待機し、じーっとお客さまを待つ。夕方4時に
なっても5時になってもお客様が来ない時は、心も
体も懐も寂しい気持ちになっていた。
しかし、頑張るしかなかった。