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起業 中編

売り上げはどうかというと、毎週預かった
物件のオープンルームをする。広告料は
私の負担。1回のオープンルームでチラシを
1万枚ぐらい新聞に折り込み、新聞の紙面に
広告を入れて、総額15万円ぐらいかける。
信用が無く、実績のない私。売主から直接
仕事を請ける事はないので、買って頂いた
方から貰う仲介手数料のみが収入。突然
会社を辞めて起業した私は、直接売主からは
仕入れができていなかった。粗利として入る
お金は、仲介料として買主から入る50~60万円
なのだ。


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1回オープンルームすると広告代が15万円。
2回すると30万円。3回すると45万円なので、
売れたとしても仲介手数料50万円から広告
料の45万円を引くと5万円しか残らない。
広告代理店を儲けさせる為にオープンルームを
したようなものだ。だから、1回で売らないと
生活ができない。面白みが無いと言いたい
ところだが、それどころではなかった。


100121-01.jpg


とりあえず、事務所はワンルームで始めたが、
さまざまな経費が掛かる。事務所の家賃。
電気代に電話代。コピー機のメンテナンス費用。
輪転機のリース代。「売れなかったらすぐ倒産。」
という状況だった。オープンルームにお客様が
来られたら「この人に買わせなければ…。」と
思っていた。ハイエナみたいに感じるが、背に腹は
変えられないのだ。1回で売らなかったら50万円は
入ってこない。売れても売れなくても、15万円の
広告料は飛んでいく。

実収入は差し引き35万円。しかし、仕事の割には
少ない金額。でも「35万円が入らなかったら
死んでしまう。」そんな気持ちで、毎週オープン
ルームをしていた。ハイエナみたいな営業だが
「サラリーマン時代の人を騙す仕事と違うか
どうか…。」なんて考える暇もなかった。


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オープンルームの誘導看板はお手製。一般的な
不動産会社はプラスチック製。案内の矢印は
ビニールのシールが普通。しかし、私はお金が
無かったので、近くのスーパーで段ボール箱を
もらってきて、適当な大きさに切り、それに
コピー機で印字した紙を糊付けして作成する
手作りのもの。お手製というと格好がいいが、
雨が降ると糊がはがれ、誘導看板の意味が
無くなるようなものだった。

オープンルームの日は朝6時に起き、その看板を
50程設置してまわる。また、チラシは1000枚程
手配りする。そして、オープンルームの部屋で待機。
部屋に待機し、じーっとお客さまを待つ。夕方4時に
なっても5時になってもお客様が来ない時は、心も
体も懐も寂しい気持ちになっていた。
しかし、頑張るしかなかった。

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